自動車事故の被害者になったとき、その治療に必要な医療費は、原則として加害者が支払う損害賠償金の中から支払われるべきものです。医療費は全額加害者負担にし、その都度かかった医療費を支払ってもらうのが一番よい方法です。
ところが、実際問題として、良心的な加害者ばかりいるわけではありません。また、加害者に支払い能力がないこともあります。それではさしあたって必要な病院への支払いに困ってしまいますし、自費診療では被害者の負担が大変です。
そこで、とりあえず被害者救済の意味から、必要な治療費は健保組合が一時立て替えてよいことになっています。つまり、被害者となった人は、まず健康保険で治療を受けることができるわけです。ただし、健康保険で治療を受ける場合は、必ず健保組合に対して「第三者行為による傷病届」を提出しなければなりません。
※直ぐに届出書(第三者行為による傷病届)を提出できないときは、口頭や電話で一刻も早く健保組合に連絡し、後日できるだけ早く提出してください。
<留意事項>
被害者が健康保険で治療を受けた場合、もともと加害者が支払うべき治療費を健保組合が負担したことになりますので、後日、健保組合は、その治療費を加害者または自動車保険会社等に請求します。この請求に必要な書類が「第三者行為による傷病届」です。 なお、健康保険で治療を受けたときは、示談する前に健保組合に治療終了日(含む症状固定)を連絡し、勝手に加害者と示談することのないようにしてください。
※<参考>健康保険法施行規則
第六十五条(第三者の行為による被害の届出)
療養の給付に係る事由又は入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給に係る事由が第三者の行為によって生じたものであるときは、被保険者は、遅滞なく、届出書(第三者行為による傷病届)を保険者(健保組合)に提出しなければならない。
※<参考>健康保険法
第五十七条(損害賠償請求権)
保険者は給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価格の限度において、保険給付を受ける権利を有する者(被扶養者を含む)が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。